「…ぁあっ…ぃ…」 どうしてだろう。どうしてだろう。と俺は頭の中で繰り返す。どうしてだろう。どうしてだろう。足の下には血まみれの俺の大事なライドウがいるし、もう、本当に助かるのかなぁこれは、というくらいの大怪我で(だって手とか取れてるもの)君の悪魔はどうしたの?と聞けば、うつろな声が繰り返されるばかりだ。どうして管を収めるのは白いホルスターなんだかくそ!と俺は葛葉を口先でののしってみる。でもここが真っ暗闇の事務所でも、真っ白な雪の上でもライドウの命の長さなんてかわりゃしないそうだろう?大体ゴウトはどうしたんだろう、と思いながら脚の先でライドウをひっくり返せば体の下に首の取れた猫がいた。 (あぁ、そういうこと) ゴウトがいない理由には納得がいったので、俺はライドウに問いかける。ねぇいったいどうしたの?お前は助かるの?でも本当にライドウはうめくばかりで答えない。 「どうしたの、ライドウ?」 「…ぁ…?」 だめだなぁ、これは、と俺は思った。今からライドウを急いで担ぎ上げて、病院か、それこそヴィクトルのところに運んだらなんとかなるのかなぁ?なんとかなるのかもしれないな。俺はそう考えたけど実行をする気は起きなかった。本当にまったくライドウはひどい有様で、手は取れかけているわ、胸にはばっさり深い傷はあるわ、男っていうのは弱いから三分の一血が出たら死んでしまうのだけれどもうそれとか余裕で超えているように見えるし、なにより目がにごっている。綺麗なのにね、あぁ、もったいない。でも息はしているし、問いかければうめき声は返す。こんなときでもライドウは綺麗だし。 「ライドウ」 どうしてだろう。どうしてだろう。足の下には血まみれの俺の大事なライドウが。どうしてだろう。どうしてだろう。どうしてこんなに気持ちいいんだろう。あぁ。 |