狂人が
空白を愛することは出来ない。 部屋というよりもそこは物置のようだった。ただ大きな窓がついていて、ひたすら光をとりこむだけの、なんにもならない部屋だった。こんな変な間取りはこのアパートの端の部屋だけで、大して使えもしないのにそのせいで家賃はすこしばかり高かった。 ふすまで区切ってあって、畳敷きだ。壁は土壁みたいで、なにかきらきらしたものが入っている。あれはどうして入っているのか、いつも少し謎だ。赤木がそういったことを天は覚えていた。彼の話はいつも唐突に始まって、やはり唐突に終わるのだ。 「なぁ」 赤木はよく眠った。朝も昼も夜も、気がつけば寝ている。老齢の猫はそういえばよく寝る。寝る子とかいて寝子というのだとも聞いた事がある。寝るには体力がいると聞いたのに、いやけれど、体の病気ではなかったのだった。機能を失った獣は生き延びることが出来ない、赤木しげるが生きているのは彼が人間だからに他ならない。感傷という罪悪か。天は目を眇めた。 「なんですか」 彼にとって日々とはどのようなものだろう、と天は時々考えた。区切りはもはやきっと存在しないのだ。そうして自分はどうしてこんな時間に起きているのだろうと思う。空が青ざめた鋼みたいな色をしている。夜明けだ。 「眠いな」 寝たらいいじゃないですか、と天は答えた。俺もとても眠い、と付け足した。赤木は煙草に火をつけて、笑いながら一緒に寝るかと言った。そういえば、この人は煙草も酒もやめない。その人間の人間らしさとはなんだろう。何かが大きく損なわれているのかもしれないし、それを感じ取れはするけれど言葉には出来ない。 知性とは理性のことだろうか。狂気と狂人は等式で結ばれるのだろうか。あのときチューブを抜いたのは正しかったのかどうか、天は考えない。赤木の都合など考えないからやったことだ。赤木は天の答えを暫く待って、そして笑った。 「寝ていると、何かが解けていくような気がするよ」 笑ったまま赤木は、そういった。空はもうすぐ今日をはじめて、赤木は睡魔に身をゆだねて時間に置き去りにされる。彼自身からも置いていかれる。 「眠いなぁ」 そうして今日もまた何かがゆるやかに死ぬ。 |
なんていうか、赤ん坊に触れて笑う赤木というのがあって、狂人を書いたのですがあまりにも、意味不明すぎたのでフォローの話を書こうと思ったらただの天赤に!
好きです。天が。通夜編は原田と銀次と僧我とひろと天が好きです。金光も好きです。ほぼ全員!天の性格も口調もよくわからない。本当はこんなのじゃない。
あとこの役割は天ではなくひろだった。やっぱり天はチューブを抜かない人だ。